1年先の結婚式場をキャンセル

20歳代の女性社員。結婚が決まり式場を予約した。ところが、都合が悪くなったのでキャンセルを申し出ると、まだ1年先なのに申込み金10万円が返却されない上に見積額の20%にあたる50万円を請求された。業者は約款に記載している通りというが、早期の解約なのに、あまりにも高額で納得できない。支払いに応じなければならないのだろうか?

国民生活センターによると、結婚式場のサービスに関する相談は増え続け、2007年度に1,000件を超えて08年度は1,222件に達した。その6割が業者に申込金の返還を断られたり、高額な申込金の返還を請求されたりといった問題だ。08年度に相談者が業者と契約した金額の平均は197万円で、既に支払った平均金額は38万円だった。

一方、少子化や晩婚化で婚礼の数は減っている。経済産業省の調査では、業者が08年度に取り扱った挙式は6万9,674件で、9万745件あった00年度に比べ2万件以上も少ない。国民生活センター情報部の飯田氏は「市場が縮小する中で業者間の競争は激しさを増し、顧客を取り合う状況が結果として問題を引き起こしやすくしている」と指摘する。

娘は婚約者とともに、父が懇意にしている弁護士に相談することにした。

早期の解約にもかかわらず、申込金の返還拒否や違約金の請求された事例のほかに、キャンセルをめぐるトラブルは次のような原因で起きている。

  1. 費用や解約料などの説明不足
  2. 契約を急がせる
  3. 仮申込みなど契約が正式に成立しているのか認識に違いがある
  4. 不誠実な対応

などだ。

業界団体の日本ブライダル事業振興協会は「結婚式・披露宴会場におけるモデル約款」を作っている。解約についての条項をみると、「解約期日が365日以前の場合、解約料金は申込金の25%または3万円のいずれか低い額まで」などと定める。この約款はあくまでもモデルで、実際には業者がそれぞれ独自に作成し、顧客にそれを示すだけなのが普通だろう。

約款に規定し、顧客に示していれば実損以上と思える解約金の請求に問題はないのか?契約の問題に詳しい弁護士は「消費者に不利な条項は無効」と強調する。

東京地裁は05年9月、申込金10万円で1年以上前に式場を予約した数日後に取消した事例について、返金を認めない約款が消費者契約法の規定により無効とした判決を下している。02年にも挙式当日の5ヶ月前にしたキャンセルで、解約料は予約金全額と定めた約款は無効と判断、業者に予約金相当の損失は発生していないとし、全額を返金させたケースがある。

同法9条1号は「消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害額を超える部分は無効」と規定する。弁護士は「1年以上の間に新たな予約が入ると十分期待できる」とし、「この段階で平均的な損害額を具体的に見積もるのは不可能」と説明する。業界団体のモデル約款と比較しても違約金の請求はあまりに多額ともいえる。したがって「業者が顧客から受け取った分は不当利得で返還請求ができる」。

ただ、相談者の支払い済み金額をみると、訴訟を起こしてまで回収を考えるのは現実的とは言い難い。だからこそ「契約に際しては注意を払ってほしい」と呼びかける。

式場を見比べるうちに変更したくなることもあるだろう。これから幸せになろうとしているのに解約するのは縁起が悪いと思う人もいるかもしれない。「契約書や約款をきちんと読み、見積もりの際にはどのようなサービスが含まれるかをよく確認すれば、大抵のトラブルは防げる」。慎重に事を運んでこそ思い出に残る挙式につながるのではないだろうか?